ワクチンで予防可能なウイルスに関するメモ [感染制御・感染管理・滅菌・医療安全]
ワクチンで予防可能なウイルス性疾患のいくつかについてのメモ
・麻疹 5類感染症 麻疹ウイルスはParamyxovirus 科Morbillivirus 属に属し、直径100~250nmのエンベロープを有する一本鎖RNA ウイルスである。空気感染を主として様々な感染経路を持ち、疫学的には数年ごとに流行を繰り返す。有効な特異的治療法は無いが、ワクチンによる免疫獲得率は95%以上と報告されており、有効性は明らかである。しかしながら我が国の1歳児の接種率はわずか50%であり根絶間近な欧米諸国と比べ、接種率の向上は喫緊の課題である。
・結核 2類感染症 抗酸菌である結核菌は長さ2~10ミクロン、幅0.3 ~0.6ミクロンの細長の桿菌で、芽胞、鞭毛、莢膜はつくらない。感染して発症すると、乾いた咳により飛沫核が飛散し空気感染する。リファンピシン、ヒドラジドの服用で治療可能だが、不適切な服用により多剤耐性を獲得することが問題になっており、DOTS(Directly Observed Treatment, Short course)を行うことが原則となっている。WHO の推計によると、世界人口の約1/3にあたる20億人が結核に感染し、そのうち毎年800 万人の新たな結核患者が発生し、300 万人(そのうち30万人は15歳未満の子供たち)が結核で死亡している。その99%が開発途上国に集中している。これは単独の病原体による死亡としては依然として最悪の第一位である。WHOは三大感染症のひとつとして注意をはらっている。我が国では、近年大都市において、若年層の感染や高齢者の再感染が問題となっており、人口過密などにより集団感染もしばしば見られる。BCG接種は小児の結核性髄膜炎や粟粒結核の発病防止にきわめて有効であるが、成人の肺結核に対する発病予防効果は50%程度とされる。現在では生後4~6ヶ月に単回接種している。
・B型肝炎 5類感染症 HBVはDNA型の肝炎ウイルスで、ヘパドナウイルス科に分類される。直径約42nmの球状ウ イルスで、外被(エンベロープ)とコアの二重構造を有している。感染経路は、輸血、不適切な観血的医療行為などによる経皮的感染と、性交渉、分娩時の経粘膜感染によるものであると考えられる。一過性感染の場合、70~80%は不顕性 感染で終わるものの、残りの20~30%のケースでは急性肝炎を発症する。このうち約2%が劇症 肝炎を発症し、この場合の致死率は約70%とされている。ワクチンで予防可能であり、組換えDNA技術を応用してHBs遺伝子を酵母や動物細胞で発現させ製造した第二世代、さらにプレS蛋白をHBs抗原に付加させたワクチンも認可されている。
以上
参考)国立感染症研究所 感染症情報センター http://idsc.nih.go.jp/index-j.html
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